13:■鉄構技術 2007年8月号に掲載

【記事全文】

アドバンス制震システム+DOVE JOINT


media_0708.jpg■アドバンス制震システムとは

アドバンス制震システムは、増幅機構によって建物の層間変形よりも大きな変位量と速度をオイルダンパーに作用させることにより、地震エネルギーを効率よく吸収して、建物の減衰性能を向上させる制震装置である(図1)。本システムは、ベターリビングから一般評定を取得(2005年1月11日付)し、既存建築物の補強や新築建築物に用いられている。発売約2年半が経過したが、今では学校建築やオフィスビルの耐震補強、新築の鉄骨造建物への採用など、実績を着実に伸ばしている。写真1に消防署(Is=0.9)への設置例を示す。


■新築から耐震補強までのフルラインアップ

media_080728_01.jpg アドバンス制震装置は、さまざまな建物にジャストフィットの制震性能を与えるため新築・補強それぞれ200シリーズ(最大減衰力200kN)、300シリーズ(同300kN)、500シリーズ(同500kN)の3シリーズ(図2 )に加え、このほど800シリーズ(同800kN)をラインアップに加えた。アドバンス制震装置は上下左右の反転も可能で、建物の柱間隔や階高、開口部などに合わせて、柔軟に対応する。
 新タイプの800シリーズ(写真2 )は、「さらに大きな減衰力」という要求に対応して開発。現在、1号施工建物として、福井県下の6 階建てオフィスビルで施工している。同ビルには、計33 枠66 基(500シリーズ22枠44基、800シリーズ11枠22基)のアドバンス制震装置が採用されている。

■用途が拡大-摩擦ダンパー開発

 「アドバンス制震システム」用摩擦ダンパーKFシリーズを開発し、ラインアップした。KF摩擦ダンパーは、1)減衰力の調整が可能、2)摩擦ダンパー特有の簡明な履歴特性、3)全長を短くでき、マンサード配置に対応が容易、4)速度依存性・温度依存性の少ない安定した性能、5)メンテナンスが不要・繰返し耐久性にも優れる、などの特徴がある。川口テクノソリューションは、建物性能に応じて、これまで蓄積した設計・施工ノウハウを基に、最適なダンパーを提案・提供する体制を整えている。

■ダブジョイントを新開発

media_0708_02.jpg 「アドバンス制震システム」が多様な耐震補強工事に採用される中、ノウハウの蓄積から誕生したのが「ダブジョイント(DOVE JOINT)」工法。耐震補強等に採用する鉄骨枠の接合部に凹型と凸型をした鋳鋼部品を用い、これを嵌合して高力ボルトで締め付けて固定する。従来の高力ボルト接合に替わる新工法で、今年4月にはベターリビングから一般評定(CBL SS001-07)を取得した。
 建物の耐震補強は、一般に鉄骨ブレースや制震ブレースが多く用いられている。これらの補強工法では、ブレースは鉄骨枠を介して建物に取り付けるが、鉄骨枠には地震時にブレースと建物との応力伝達を確実に行うとともに、コンパクトに分割して建物内に搬入できる分解組立て性能が要求される。従来工法は、この分割した鉄骨枠をスプライスプレートによりボルト接合していたが、鉄骨枠の外側に鉄骨枠を固定するナットやボルトの頭が枠の上部に露出するため、意匠性を損なうほか、露出したボルトやナットに引っかかり怪我をする危険もあった。

■フラットな接合部で意匠性豊か

 ダブジョイントは、鉄骨の両端に凹凸加工を施した鋳鋼製の部品を取り付け、この端部の凹凸を利用して鉄骨枠に嵌合する独自技術を採用している。このため、鉄骨枠を接合し工事が完了しても、ボルト、ナットは最終的に隠れるウェブ部近傍にあるため、ボルト、ナットの突起部が鉄骨枠上部に露出することがなく、上部がフラットな形状が得られる。
 このため安全性が格段に優れ、嵌合方式のため大幅な工期短縮を実現するほか、意匠性にも優れている。ダブジョイントの主な特徴は1)ボルトやナットが枠外に出ないすっきりとした納まりが得られる、2)各種実験で強度を確認している、3)接合部の作業内容を簡素にし、工期の短縮が実現する、4)鉄骨枠の外側に突出部がないので、接着工法に適している。また、仕上げ工事も簡素化できる。
 ダブジョイントは、鉄骨ブレースによる耐震補強工事に用いることにより、従来施工法による課題を解決するほか、安全性が高く、意匠性に優れた内部空間を創出する。さらにアドバンス制震システムと組み合わせることにより、建物の耐震性能要求を満たし、床面に対してフラットですっきりした外観が得られる。
 鉄骨端部に取り付ける接合部品は、高強度の鋳鋼品SCW550(JIS G5102 、溶接構造用鋳鋼品)を使用する。鉄骨枠には、SS400級のH形鋼H-200とH-250を用いる。
 鋳鋼品は川口金属工業が製作し、同工法の設計は川口テクノソリューションが、販売は系列会社のノナガセ(本社・東京都中央区八丁堀、・03-3552-1314)が行う体制を敷い
ている。
 今後はさらに顧客の要望を積極的に取り入れ、新工法開発に取り組んでいきたい。